オリジナルシナリオ集:クトゥルフ神話TRPGシナリオ「這いよるのは……」

今回紹介するのは,クトゥルフ神話TRPG用のオープンシナリオです.

オープンシナリオの為,PCはある程度自由に捜査をすることが出来ます.

管理するNPCの量やデータ量もクローズドと比べて増えるため,ある程度クトゥルフ神話TRPGに慣れたGM向けのシナリオとなっています.

また,(主にSANチェック方面で)難易度が少し高めのPC死亡率の高いシナリオとなっているため,実際に回す際は,適宜バランスを調整することを推奨します.

 

※シナリオ使用に関して

シナリオを使用するのに,特に許可や報告は必要ないです.

バンバン使っちゃって構いませんし,改変も自由です.

 

ただ,使用報告をコメントでしてもらうともれなくamidaのモチベが上がります.

 

クトゥルフ神話TRPGシナリオ

『這いよるのは…』

プレイ人数:3~6人(4~5人推奨)

プレイ時間:4~6時間(目安)

 

 

1.シナリオ概要
探索者はとある男性と女性の二人と関わりを持つことになる
その二人は何かに酷く怯えているようで……

 

真相
数年前、太平洋に隕石が落下してきた。その隕石には、ショゴス細胞と星の精の細胞が付着していた。
日本政府は秘密裏にこの生物を再生、研究していたが、ある日そのサンプルが一体ずつ脱走してしまう。
この2体の生物は最初は研究関係者に狙いを定め、狙った人物を殺害するとその人物の関係者に狙いを定める、
という風にして次々と人間を殺害していった。
そして、その何人目かの被害者となったのが綾里と高坂である。


2.NPC
綾里 仁(21)
大学二年生の男性
水の滴る音に非常に敏感に反応する。

高坂 千尋(22)
大学三年生の女性
常に当たりを見渡して落ち着きが無い

 

3.特別ルール
このシナリオ中に限り、探索者の「隠れる」技能の初期値をDEX×5とする。
また、隠れる技能を使用する場合、KPによる非公開ロールとし、
結果については出目によって以下のように処理する。

①クリティカル……自分も含め、その場にいる全員の結果を②と同様にできる。(ファンブルも含む)
②技能値の二分の一以下で成功……その場から動かない限り発見されることは無い。
③通常成功……相手が特に警戒をしていない場合は発見されない。
       こちらを見つけようと捜索中の場合、相手が目星に成功すると発見される。
④通常失敗……相手が警戒していなくても目星を振り、成功したら発見される。
       相手が警戒している場合は発見される。
ファンブル……同行者にクリティカルがいない場合確実に発見される

 


4.シナリオ
①導入
探索者は共通の友人である大学教授の芳川に呼ばれて集められる。
芳川の話
・自分のゼミ生のうち二人が最近自室に閉じこもって大学に顔を見せに来ていない。
・様子を見に行きたいが、担当教授である自分が直接行くのは大学の規則的に色々不味いので、代わりに
 様子を見てきてほしい
といって二人の住所を渡される。

学生の名前はそれぞれ綾里 仁と高坂 千尋であることが分かる。
芳川に詳しく二人について聞くと、二人とも真面目な生徒だったが、様子がおかしくなる直前に
綾里は叔父を、高坂は姉を亡くしていることが分かる。(このことは、二人の友人なども知っているが、
それ以上の詳しいことは警察でなければ分からない。)
また、綾里はアロマグッズを収集するのが趣味、高坂は人形を集めるのが趣味だとも聞ける。

②綾里の家
綾里の家に行くと、綾里は応対してくれるが、酷く何かに怯えており、
まともに会話が出来る精神状態ではない。
家の中は、ここ最近掃除がされていないだろうというくらいに荒れ放題である。
また、アロマの臭いが充満している。
また、水道の蛇口などの水場がガムテープで完全に封鎖されており、バスルームやトイレに至っては、
ガムテープで目張りがしてあって完全に塞がれている。
目星で部屋を詳しく調べるならば、アロマキャンドルや芳香剤などの臭い系グッズ
があることがわかる。
医学で調べれば、彼が極度の脱水症状に陥っていることが分かり、話を聞けば
とぎれとぎれだが以下のことが分かる。

・ここ最近は水なんか飲んでいない。
・少し前はホテルを泊まり歩いていたが、外にでるのも怖くなったので最近は家にいる。
・あのメールを受け取ってからおかしくなった。
彼のケイタイを見せてもらうと、「ハイシン カンリョウ  ユウジ→ジン」という
謎のメールを見つける。配信者は彼の叔父の綾里 雄二。
また、彼は極度に水を怖がり、水を飲ませようとすると激しく抵抗し、その場から逃げ出そうとする。
一連の事情を聴いても酷く怯えすぎていてまともな会話にならないが、水、怪物などの単語は分かる。

③高坂の家
高坂に家に行くと、応対してくれるが綾里と同じくまともな精神状態ではない。
部屋に入ると、部屋のいたるところには粉がまき散らされており、天井からはスズランテープと鈴が
部屋一面にぶら下げられており、一面がのれんのようになっている。
部屋について聞いても、奴がどこにいるか分かるからとしか答えない。
また、不審なメールを受け取ってからおかしくなったことも分かる。
メールの内容は「ハイシン カンリョウ アカネ→チヒロ」
送信者は彼の姉の高坂 茜
高坂は常にキョロキョロと辺りを落ち着きなく見渡している。
彼女も部屋から出るのを嫌がる。
また、彼女は笑い声に対して非常に敏感に反応し恐れる。
また、帰る時には危ないからと鈴を人数分押し付けられる。


④合流
二人の状況を芳川に報告すると、心配なのでしばらく気にかけてやってほしいと言われる。
もし天気予報を確認するならば明日の予報は雨であることが分かる。
特に何もなければ初日は終了。

探索者の中からランダムで水などに関係する描写をして怖がらせること。

⑤2日目
目を覚ますと、雨が降っている。
二人と連絡先を交換していたのならその探索者に、していないのなら芳川に二人から連絡が入る。
電話を取っても、無言電話であるが、よく聞けば二人とも息を殺しているような様子が伺える。
10秒ほどで電話は切れる。

 

⑤-1綾里家の襲撃
綾里家を訪ねると、ドアの鍵が開いている。
部屋の中に入ると、ソファの裏から手が伸びてきて引きずり込まれる。
引きずり込んだのは綾里で、ひどく怯えた様子で、助けてくれ、バケモノがとしか言わない。
部屋を注意深くみるならば、塞がれていたバスルームの扉が開放されており、奥からゴポゴポと
水が逆流してくる音がすることに気づく。
しばらく隠れていると、水の滴る音が聞こえ、やがて何かを引きずるような音が聞こえてくる。
さらに少しするとショゴスの触手が姿をあらわす。(1d3/1d10)

悪夢のような、黒っぽく玉虫色の臭くて伸縮性のある柱状のものが
にじみ出るようにして這い出てきた。体全体から微かな光を放つその
生物は、間違いなくこの世に存在してはならないものだ。

ショゴス
能力はルルブ準拠
押しつぶし 70% 8d6
目星30%
この場での探索者の隠れるは必ず成功する。
綾里だけが確定で発見される。
発見された綾里はパニックに陥り辺りのものを手当たり次第にショゴスに投げつけ始める。
その時、ショゴスが一瞬怯む。目星に成功すれば、アロマキャンドルを投げつけられた時に
ショゴスが怯んだことが分かる。(ショゴスの弱点は火と電気である)
一瞬怯むもののショゴスはそのままへたり込む綾里を触手で叩き潰す。(1/1d6)
その後ショゴスは近くの蛇口をむしり取り、そこに吸い込まれて消える。
そして、探索者のケイタイにメールが届く。
「ハイシン カンリョウ ジン→(探索者名)」

⑤-2高坂家の襲撃
高坂家を訪ねると、ドアの鍵は開いている。
中に入ると、右手の部屋から高坂が覗いており、呼ばれる。
やはりひどく怯えており、バケモノが来る、隠れてとしか言わない。
すぐに鈴の音がし、部屋中に張り巡らされたスズランテープの一部分が揺れ始め、まるでその場所に
何者かがいるかのように押しのけられる。そして、クスクスという笑い声が聞こえる。
イデアに成功すると、その場所には透明な何者かがいるということに気づく(0/1d3)
ここでの探索者の隠れるは必ず成功する。
高坂だけが確定で発見される。
高坂はその場にへたり込んでしまい、何者かに捕まれ、全身の血を吸われて息絶える。(1/1d6)
そして、その血を吸った生物が姿を現す。(1/1d10)

何もない空間に血が、まるで血管をとおっていくように広がっていく。
そして、しまいにはそれは生物の形を取った。
透明な体を持つその生物が自ら吸った血によりその姿を形作ったのだ。
脈動しうごめくゼリー状の塊、波打つ無数の触手の付いた胴体
触手の先端は口のよう器官が付随し、次の獲物を求めるように開閉を繰り返している。

星の精
ルルブ準拠
耐久20
カギづめ 40% 3d6
噛みつき 80% 2d6+吸血
吸血 毎ラウンド1d6のSTR吸引(STRは一日に1d3回復する)
目星30%
なお、星の精はステータス的に勝てない相手では無いので、万が一力づくで撃破されてしまった場合は
そのまま退場する。

しばらくすると星の精はまた透明となり、部屋から出ていき消える。
そして探索者にメールが届く
「ハイシン カンリョウ チヒロ→(探索者名)」

⑥探索開始
ここからは自由探索である。
以下の情報を妥当だと思われる場所で提示する。

・綾里は叔父である雄二を、高坂は姉である茜を最近亡くしている。
・二人の死は記録上は自然死となっており、警察のデータも揉み消されている。
・雄二と茜も死ぬ少し前に共通の知り合いを亡くしている。その知り合いは灰根 直樹という名前であり、
 二人の家まで行って遺品であるケイタイを直接調べれば、灰根から送られたメールを発見できる。

なお、探索中にランダムに(できれば人気の少ない場所で)ショゴスや星の精が近くに現れ、そのたびに隠れる
ことになる。もし発見された場合、毎ラウンドDEX×3か回避の半分を振り、成功すれば逃走可能である。
また、ショゴスに対しては弱点を突いた攻撃をすることで2ラウンド稼げる。
発見されるたびに1/1d6のSANチェック

また、探索中に水の音やクスクス笑いなどをの描写をして怖がらせてもよい。

⑦灰根の家
灰根の家は今は空き家となっている。
生前はサラリーマンであったと周囲の人からは聞ける。
なお、灰根の家を探索中にショゴスか星の精を登場させること。
灰根の家は二階建てであり、
一階に応接間と客間
二階に寝室と薬品庫がある。

・応接間は何かが暴れたように散乱している。
奥にクローゼットがあり、中には普通の服に交じって白衣が掛けられている。
白衣のポケットには注射銃が一丁入っている。
・客間にはベッドや絵がある。どちらもそれなりに高価なもので、一般的なサラリーマンが
 買えるようなものではないことが分かる(要技能)
・薬品庫には薬品棚がある。
棚を調べると、SAMPLE No.1と書かれた緑の溶液とSAMPLE No2と書かれた黄色の溶液がある。
二つの溶液はそれぞれ直径5㎝、長さ15㎝ほどの変わった形をした細長い容器に入っている。
イデアロールに成功すれば、注射銃に組み合わせて使うものだと分かる。
・寝室には日記がある。隅の方に丈夫そうなダイヤル式の金庫がある。

灰根の日記

○月×日
『あれ』の研究を始めて5年、ようやくその細胞の培養に成功した。
明らかにこれは地球上に存在するものではない。
もしかしなくてもこれは世紀の大発見というものに他ならないだろう。
惜しいのは、世間に公表できないということか。
アメリカやロシアなんかの大国に先んずるために日本が独断で秘密裏に研究を
進めている手前仕方ないのだが。
もし公表できるのならノーベル賞どころの騒ぎでは無いというのに。

△月○日
ついに例の細胞からそのもととなる生物の復元に成功した。
どちらも完全とは言い難いが、片方は液体生物、片方は透明化できる生物だ。
危険度が高いため、どちらも完璧な監視体制で隔離してある。
いくつかの簡単なテストを行ってみたところ、二つの生物に以下のことを確認した
・ある一定の標的に対してその標的を撃破するまで追跡する。
・探知能力にいささか難がある。

◇月×日
二つの生物についてのさらに詳しい実験結果が得られた。
ある程度まとまったデータが取れたのでレポートにまとめ、金庫に入れておくことにする。
金庫のナンバーは忘れないように写真立ての中に入れておくことにする。

写真立ては一階の応接間にある。(ここでショゴスなどを登場させるとGOOD)


金庫の中身

灰根のレポート

SAMPLE No.1
この生物は液体状の体を持つ。その体は未知の細胞で構成されており、
打撃、斬撃、銃撃にも耐える強靭な構造をしている。
知能は少なくとも標的を見分けて追い続けられるだけのものを備えている。
高温の炎や電気に対しては一定の拒否反応を見せる。
また、液体であるため自らの形を変えることで細い管や網目を通り抜けることもできる。

SAMPLE No.2
この生物は、不可視の肉体を持つ。
獲物に対してはかぎ爪のようなもので捕えたのち、その体液を吸引する。
体液を吸引後暫くは体液が見えたままの状態となるが、数分でその
体液を代謝させるため透明に戻る。
また、常に高音域の音を発しており、その音の反響を利用して周囲の状況を把握しているのでは
ないかという仮説を立てたが、耳に相当する機関が発見できないため、未だ調査中である。


総評
今回制作したSANPLE2体について、探知能力や知能にやや難が見られた。
今後兵器として転用するならば、この点について特にもっと高精度に再現する必要が
あると思われる。
今回のSAMPLEについてそれぞれに処分用の薬品を制作した。
SAMPLEを処分する必要のある場合は薬品を霧状にして隔離室に
散布するか、最悪の場合注射銃にて直接注射すること。
研究所の職員は全員処分用の薬品と注射銃を携帯しておくこと。
どの薬品をどのSAMPLEに使用するかは薬品のラベルを確認すること。

 


⑧最終決戦
探索者が合流したところで,星の精→ショゴスの順で最終決戦を行う.
星の精とショゴスは同時には出現しないものとし,探索者合流時に順番に出現させること.
ショゴスと星の精に対して、それぞれ対応する薬品を注射することができれば倒すことが出来る。
なお、最終決戦の時にはショゴスは全身を露わにする。(1d6/1d20)
注射銃は、至近距離まで近づき、こぶしを成功させればうまく注射することができるが、
至近距離まで近づく為に敵の攻撃を回避する必要がある。
ただし、ショゴスに関しては火や電気で怯ませれば1ラウンドは無防備になる。
また、星の精は不可視であるため、血を吸って姿を現していない限りは聞き耳を成功
させたうえで命中率は半分となる。

薬品を注入できた場合、星の精はそのまま消滅する。
ショゴスはひとしきり暴れるため、注射した人物は回避かDEX×5に成功しなければショゴス
最後の抵抗を受けてしまう(ダメージ3d6)

報酬
シナリオクリア
2d10
全員生還
2d6