GM入門:オリジナルシナリオを作成してみよう(クトゥルフ編)②『シナリオの骨組みを決める』

前回で,シナリオの根幹にあたる2つの要素を決定しました.

 

  • オープン/クローズド→クローズド
  • 登場する神話生物→ティンダロスの猟犬

 

ここからは,この要素から,シナリオの骨組み部分を決めていきます.

シナリオの骨組みは,おおざっぱに分ければ次のようになるでしょう.

 

  1. シナリオの導入部分をどうするか
  2. 探索者に迫る脅威はどのようなものか
  3. シナリオの解決方法(クリア条件)はどうするか
  4. シナリオの真相(発生した原因)は何だったか

これらを決めるために,まず神話生物の情報を整理しましょう.

今回使用する,『ティンダロスの猟犬』の特徴は以下のようにまとめられます.

 

『ティンダロスの猟犬』

・猟犬と名は付いているが,姿かたちは不明

 

・時間の番人で,時に干渉するような行為(過去や未来の世界を覗き見る,時間旅行する)などの行為を絶対に許さない.それらの行為を行うと,即座に反応して行った対象を狩りにやってくる.

 

・物理法則を無視して,部屋の隅などの鋭角(90°以上の角)からワープして出現することが出来る.出現する際は,煙のようなものが発生する.

 

・獲物には,前脚で攻撃する他,舌を対象に突き刺して攻撃する.舌を刺された場合,肉体的なダメージは受けないが,精神力(POW)の能力値を永続的に吸われてしまう.舌を刺された後には,深い穴のような傷が残る.

 

 

この,ティンダロスの猟犬にまつわる事件に探索者が巻き込まれる訳です.ティンダロスの行動原理は分かりやすく,「時間を侵すものに反応して襲い掛かってくる」です.

そこで,今回は,『探索者達がうっかり過去を覗き見ることが出来るアーティファクトを除いてしまい,ティンダロスの猟犬に目を付けられる』といったあらすじのシナリオで行こうと思います.

 

このように,神話生物の特徴から,シナリオの大まかなあらすじを決めると,後の骨組みを作る際に非常に作りやすいです.

 

さて,ここからシナリオの骨組みを作っていくわけですが,ここから先の4要素の決定はどれから先にやっても構いません.どの要素から決めていくのが作りやすいかは人によってバラバラです.

 

今回の例では,アミダが普段作りやすいと思っている順番で作っていきます.

 

①シナリオの導入を決定する.

シナリオの導入部分,、プレイヤーが初めて探索者を操作する場面です.

探索者ごとに別々の演出をしてシナリオの舞台で合流させる,という方法もありますが,今回は初心者向けということで,クローズドの鉄板導入,

 

『気が付いたら知らない部屋で目覚めた』

 

で行こうと思います.

全員が同じ部屋で目覚めれば合流させる手間も舞台に連れてくる手間も省けるので色々楽です.

 

②探索者に迫る脅威はどうするか.

クトゥルフのシナリオである以上,探索者は神話生物やアーティファクトによって危険にさらされます.シナリオ中で,探索者に襲い掛かる障害がどのようなものかを決めましょう.

 

今回は分かりやすく,ティンダロスの猟犬が探索者に直接襲い掛かって来る,という脅威にします.

 

③シナリオの解決方法(クリア条件)はどうするか.

最終的に探索者がどのような目的を達成すればシナリオクリアになるのか,またそれを達成するにはどのような方法を取らせるか,を決定しましょう.

 

今回の探索者の目標は,「ティンダロスの猟犬」の撃退にします.

ティンダロスの猟犬は,どこに隠れてもワープして追ってくるため,その場所から逃げてシナリオクリア…というとは少々無理があります.完全に殺すことも難しいため,ティンダロスの猟犬を撃退すればシナリオクリア…というふうにしました.

 

ただし,まともに戦って勝てる相手ではないため,探索者がティンダロスの猟犬を倒すための何かかしらの手段を用意してやる必要はあるでしょう.まあ,それについてはおいおい決めていきます.

 

④シナリオの真相

今回のシナリオがなぜ起こってしまったのか,という部分を決めておきましょう.これを決めないままシナリオ作成を進めてしまうと,導入や結末の部分で矛盾や不明点が多くなり,もやもやとしたはっきりしないシナリオになってしまいます.ただし,その全てをシナリオ上で語る必要はありません.シナリオが終わった後にプレイヤーに真相をネタバレしていく感じでも特に問題はないです.

 

今回のシナリオでは,まずティンダロスの猟犬が出現した理由を決めましょう.

 

探索者が狙われる理由は,「過去を覗き見ることのできるアーティファクトを探索者がうっかり覗いてしまったから」にしておきます.

 

ここで,導入部分の「気が付いたら知らない部屋で目覚めた」のはなぜかという疑問が生まれます.ここは,ティンダロスの猟犬の特徴の一つ,「獲物に舌を突き刺して精神力を吸う」というのを使いましょう.

 

「探索者たちは,アーティファクトを見てしまったため,ティンダロスの猟犬に襲われて精神力を吸われてしまった.そのショックと精神力を吸われた影響で気を失い,今朝起きてから今までの記憶を失ってしまった」

 

と,このような感じで真相と導入を繋げます.

 

他に生まれる疑問としては,「なぜ探索者はそのようなアーティファクトを見ることになったのか」,「そもそもなぜそのようなアーティファクトがその場所にあったのか」

といったところでしょうか.

 

アーティファクトがあった理由としては,「骨董品好きの裕福な老人が自分の屋敷にコレクションしていた物品の一つがたまたまアーティファクトだった」

 

探索者がそれを見ることになった理由としては,「探索者は全員,その老人の遠縁の親戚にあたり,偶然近くに住んでいたため,遺産相続の関係で屋敷の下見に呼ばれた」

 

とまあ,こんなところでしょうか.

これくらい決めておけば,シナリオ中で矛盾点やどう考えても繋がらないような点はなくなると思います.

 

このような真相,バックグラウンド決めというのは慣れないうちは何を決めればよいのか迷いがちですが,シナリオを作成していくうちに,「なんかここの辻褄が合わない」という場所が出てきたときに,辻褄が合うように決めていくといいと思います.

 

 

さて,これで,シナリオの骨組みが完成したので,いよいよ次回からシナリオに肉付けを行っていきたいと思います.